「転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件」が面白かった件

T/O

sneakerbunko.jp

タイトルは本文の1行目です。

それはともかく、夜空には数多の星があり、明るい星の近くの暗い星はとても見えにくいものだ。星が、自分がどこで輝いて見えるかは選べない。そんなものは運である。明るい星は、夜を行く人の目印になり、その慰みに他の星とつなげられて形を成したり、それにまつわる物語ができたりして、人から人に伝わってゆく。暗い星はせいぜい軍人の訓練に利用される程度だろう。

久しぶりに、新刊を新刊のうちに読んだので、そのうちに好印象だった1冊を紹介しよう(おっ、ブログっぽいな)。

 

スニーカー文庫の3月の新刊の1冊「転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件」だ。なるほど、タイトルで内容がほぼお察しである。カバーイラストのヒロインの姿もタイトルを補って余りある。

雑なあらすじ紹介としては、「のんのんびより」のようなクッソ田舎から諸事情で首都圏に引っ越してきた高校生の少年が主人公だ。この年頃の引っ越しはだいたい家族の事情であり、本人の意思ではない。主人公は無事に転入試験を合格し、とある高校へと移籍する。そして、タイトル通りの出来事が起こって、あにはからんや、数年ぶりに再会となる場面から物語が始まる。

ライトノベルは少年向けで、想定読者は反抗期真っ最中なので、両親が出てこない物語が多い。なんか海外赴任とか、そういうの。この物語も諸事情でいっさい大人が出てこない。子供達だけで物語が進む。子供たちは夜の住人。

久闊を叙し、学校内での立場、関係性を構築していく主人公。いやしかし、田舎で生まれ育ったので、そういうスキルがない。まー、田舎だと学校の同窓生は生まれたころから同じと思えるくらい変化がないので、関係性を結ぶスキルを身に着ける機会がないんんですな。悩みながらも、今まで通りのスローライフスタイルと、新しい生活との折り合いをつけてゆく。その中で、新しい出会いがあったり、思い込みを修正したり、見えてなかった何かが見えてきたりする。関係は流転する。だが、子供だから選べる選択肢はとても少なく、そして脆い。

その果てに、ちょっとした変化が安定して1冊が終わる。

いろいろな不安要素は続く。なぜなら生きているからだ。今となってはLINEがなかったころにどうやって、人と連絡を取り合っていたのだろうかと不思議に思う。夜に、まるで、星と星をつなぐように、友達と、それだけじゃない関係の人と、どうやってつながっていたんだろう。

このような物語を読むと、ライトノベルは男の子の夢を描き続けてほしいとつくづく思う。続巻に期待してます。