今週の一気読み 深海紺「春とみどり」

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

在原業平

 

深海紺「春とみどり」全3巻を一気読みしました。

 

選択肢が多すぎると、立ち止まったり、もしかして立ち去ったりしませんか。「正解の選択肢」があると信じていませんか。

「春とみどり」を読み始めたころは、Webマンガが多すぎて、まったく読んでいない時期でした。たぶん、そのころは毎日ジャンプ+を読むのですら、やめてたような気がします。

選択肢が多いのは進化の証拠ですが、その発達とともに歩めるのならまだ楽しめますが、初めてそこに行ってみると選択肢があふれていて、また、自分に判断するだけの情報量がないと、どれも選べないまま終わってしまいませんか。とはいえ、ともに歩んできたはずのライトノベル、なろうもいつの間にか選択肢の多さに流されてしまいましたが。選択肢の海で呼吸し続けるのも、こちらの経年劣化で行き先を見失い、流されて、おぼれてしまいますな。ついついアーカイブスやカプコンアーケードスタジアム、ナムコミュージアムを買いがちです。お前は今すぐ「XEXEX」を買え。

その中で「春とみどり」は友人に連載開始を教えられて、それをよすがにおぼれずにたどり着いた印象的なWeb連載マンガです。ここからWebマンガをまたすこしづつ読み始めました。

 

それはともかく。

 

3月だと急に春になったので、読み返した。書棚のいつでも読める位置にさしてある「春とみどり」。

物語は突然の別れと出会いから始まる。春は出会いと別れの季節とはいえ、二度と会えない別れと、二度と会えないはずだった人との再会の錯覚が続く。それは、たぶん、やり直しで、再演で、贖罪で、後悔の傷をいやすための「正しい選択」の錯覚なんだよな~、と読み返しながら、思い返していました。

今日の別れが最後になるだなんて誰も想像しない。そんなことばかり考えていたら、気持ちが焼き切れてしまう。明日も今日と同じ。そう信じて考えなくて済ませないと、不安で立っていられない。

でも、一度でもそんな別れを知ってしまうと、臆病になってしまう。

そういうふたりの物語です。やり直しなんかじゃない、後悔から自分を救うために選んでいない。そういう春で終わるので、読み終わると素直に泣けるのです。

あ、でも、地元にいたくないよなー、とは強烈に共感しますが。残るのも後にするのも、同じくらい勇気のいる行動ですよ、はい。

 

で、作者の深海先生の同人誌が販売中ですので絶対買え。装丁から最高なので、手にする価値がある1冊です。これを読んだのも、動機のひとつ。いつだって、なにだって、次につながってゆくのです。「六の宮の姫君」のように。

 

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