今週の一気読み 今井哲也「ぼくらのよあけ」

今週の一気読みは、今井哲也「ぼくらのよあけ」でした。劇場版公開情報公表にあわせて、24時間限定で全2巻公開されていたのです。コミックDAYSは突然24時間全話無料を始めるの考えなおしてもらえませんかな。「シグルイ」全話24時間無理でしょ。人の心がない。

とにかく、めっちゃくちゃ面白かった。簡単にジュブナイルと言ってしまっていいけれど、ファーストコンタクトであったり、子供たちは夜の住人であったり、おとなとこどもとか、子供たちが私より未来に走ってゆくよとか、いろいろ。

 

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舞台はもうちょっと未来。広域無線ネットワークと学校のネットワークが貧弱でなくて、デバイスを子供でも使えて、なによりAIと自然言語でやりとりができるくらいに生活に普及した、ちょっと未来。主人公は小学4年生。昔は言えたいろいろが、なんだか言えなくなってきたこの頃から始まる、特別な夏休み。

かー、どっちが好きですかね。夏休みが終わると一緒に終わる物語と、夏休みが終わると始まる物語。

主人公たちは小学生なので、いろいろなにもかもとにかく、ままならない。とにかく何でも「バーカ!」と言わないと話始められない男の子、お姉ちゃんとすれ違いっぱなしの男の子、大人に、大人であることをはやくにもとめられた男の子。

男の子だけで秘密で楽しい遊びをしてたはずが、次第に広がってゆく。水面の波紋のように広がっていって、伝わってゆく。秘密だって言ったろバーカ! 

という話でした。

近未来を舞台としたSFを読むと「技術的にいちばんむつかしいのって、空中ディスプレイだよなぁ」とか思います。

あと、連載時の2011年時点でLINEがこんなに普及、生活基盤に食い込んでるって想像してないよな~、とか。それは今だと違和感全くないシーンなんですが、連載当時はどうだったんでしょうかね。ネットが大人の知らない、子供達だけの戦場になってしまった今だけに、つくづくそう思います。掲示板ではなくて、個人アカウントと発言が紐づけられて、その発言ツリーができて、チャンネルに入れる、入れないでグループが可視化されてゆく。女の子側だけそういう社会の物語があって、本筋と並行して進むのだけれど、それはそっちでよろしくたのむわ、みたいな扱いなのが印象的でした。

 

私の意見としては、AIは人より賢くないと作る意味がないです。なにはともあれ、この場合の「人」ってどのあたりを指すんでしょうかね。将棋ソフトの思考ルーチンって、もう圧倒的大多数の将棋指しより強いですよね。それはまだ人を越えていない扱いなんでしょうか。疲れない、飽きない、感情的にならないAIは人智をさくっと越えてゆくでしょう。これを感情的に批判する人は多そうですが。

と、物語の最後のページを見て、そう思うのです。

今週の一気読み 今井哲也「ハックス!」

今井哲也ハックス!」を一気読みしました。全4巻。4巻だけちょっと厚い。それは熱量。

 

友人に教えてもらったこの漫画。私の中の大切な一部分です。ときおり4巻だけ読み返すのだけれど、ひさしぶりに全巻一気に読み返しました。まだこの漫画から熱を感じられるのであれば、自分は立っていられます。いつの日か、まぶしいとだけ思ったり、若いなーとかおもったり、まともに見られなくなる日が来ると思うのは、悲しいのですが。

物語は、主人公の女の子が高校入学から始まる。新入生歓迎会でのオープニングアニメを見た瞬間に、自分もやってみたい! とアニメを作るために走り出す。あこがれたものに、追いつきたいとすぐに走り出したり、自分もできると信じてみたりする。その行動の熱量がもうね、すごい。読んでるとそわそわする。

 

これが部活、学校内なのが、残酷だ。お仕事モノであるなら、その場を立ち去りプライドを守れる。彼女に焼かれないように距離をとれるだろう。でも、学校だからそれができない。避けられない不幸がどうしても起こる。

4巻は冒頭の過去話から始まり、知らないけれど見ている人がいたり、そしてなにより、自分の行きたい道の先を行く人と出会える。この1冊だけで、ぐわんぐわんと揺さぶられる。

初めてこの漫画を読んだときは、タイトルの意味も拾い損ねたくらい、夢中になった。読み終わって、読み返して、タイトルの意味に気づいたかな、どうだろう。

プライドが邪魔をする。そういう人がいる。本人もわかってない。かもしれない。これについて考えると、自分の中もぐちゃぐちゃになる。自分はどうだろうか、とばかり考えてしまう。楽しいことをやったもん勝ちは絶対に正しい。それをみて「自分だってすぐにできる」と考えてしまう人はとても危ない。

なにもかも、すぐにはそこには行けない。でも、やるのはすぐにできる。できない理由ばっかり用意していないか、と考えてしまう。

 

主人公は次から次へと湧いて出てくる、できない理由をねじ伏せて、助けてくれる仲間に出会う。でも、私はその本筋よりも、主人公には伝わらないけど、影響を受けてやりはじめる、もうひとりの女の子の物語が大好きだ。やってしまうと、ビリヤードの玉のように、かちん、かちんとぶつかって、影響しあってゆくのは避けられないのだ。

いろいろ、どうしようもない時に、読み返したくなる漫画で、好きなところだけ読み返しても十分だし、一気に読むと頭の中に刺さりっぱなしのカセットが入れ替えられるような心地よさがある。

今週の一気読み 深海紺「春とみどり」

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

在原業平

 

深海紺「春とみどり」全3巻を一気読みしました。

 

選択肢が多すぎると、立ち止まったり、もしかして立ち去ったりしませんか。「正解の選択肢」があると信じていませんか。

「春とみどり」を読み始めたころは、Webマンガが多すぎて、まったく読んでいない時期でした。たぶん、そのころは毎日ジャンプ+を読むのですら、やめてたような気がします。

選択肢が多いのは進化の証拠ですが、その発達とともに歩めるのならまだ楽しめますが、初めてそこに行ってみると選択肢があふれていて、また、自分に判断するだけの情報量がないと、どれも選べないまま終わってしまいませんか。とはいえ、ともに歩んできたはずのライトノベル、なろうもいつの間にか選択肢の多さに流されてしまいましたが。選択肢の海で呼吸し続けるのも、こちらの経年劣化で行き先を見失い、流されて、おぼれてしまいますな。ついついアーカイブスやカプコンアーケードスタジアム、ナムコミュージアムを買いがちです。お前は今すぐ「XEXEX」を買え。

その中で「春とみどり」は友人に連載開始を教えられて、それをよすがにおぼれずにたどり着いた印象的なWeb連載マンガです。ここからWebマンガをまたすこしづつ読み始めました。

 

それはともかく。

 

3月だと急に春になったので、読み返した。書棚のいつでも読める位置にさしてある「春とみどり」。

物語は突然の別れと出会いから始まる。春は出会いと別れの季節とはいえ、二度と会えない別れと、二度と会えないはずだった人との再会の錯覚が続く。それは、たぶん、やり直しで、再演で、贖罪で、後悔の傷をいやすための「正しい選択」の錯覚なんだよな~、と読み返しながら、思い返していました。

今日の別れが最後になるだなんて誰も想像しない。そんなことばかり考えていたら、気持ちが焼き切れてしまう。明日も今日と同じ。そう信じて考えなくて済ませないと、不安で立っていられない。

でも、一度でもそんな別れを知ってしまうと、臆病になってしまう。

そういうふたりの物語です。やり直しなんかじゃない、後悔から自分を救うために選んでいない。そういう春で終わるので、読み終わると素直に泣けるのです。

あ、でも、地元にいたくないよなー、とは強烈に共感しますが。残るのも後にするのも、同じくらい勇気のいる行動ですよ、はい。

 

で、作者の深海先生の同人誌が販売中ですので絶対買え。装丁から最高なので、手にする価値がある1冊です。これを読んだのも、動機のひとつ。いつだって、なにだって、次につながってゆくのです。「六の宮の姫君」のように。

 

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今週の一気読み 「やがて君になる」

やがて君になる」全8巻、アンソロジー2巻を一気読みしました。アニメ全話はそれに先立って一気見済。おもうに、アニメは2期前提だったではなかったか。とはいえ、アニメ終了と同時に舞台化が発表されているので、どうなんだろう。

 

連載で読んで、単行本が出たら読んで、と細切れの読書体験だったので一気読みは初でした。思い返すと、当時はタイトルから訴えかけられる情緒が弱かったのですが、一気読みすると、タイトルの含意、作中劇のタイトルなどなど象徴的な言葉が、厚い情緒をもって感じられました。

やがて君になる」の意味を連載中にわかった時は、そういうサイコホラーかと思ったものでしたが、優しい許しの言葉でした。作中にこの言葉が出てこないもの印象的です。最終話で侑からちょっと指先が触れたかのような言葉が出てきたかな。

 

読み返しても、6巻収録第33話「助走」が好きですね、やっぱり。本編としても重要な一編なのですが、助走の名の通り短いのがとりわけ印象的です。

また、毎回の扉絵は作中ではまず描かれないアクションシーンが多いのも面白いです。本来侑は派手に体を動かす人格だと思うんですよねー。最終回近くのバッティングセンターに行くシーンとか、ボウリングのシーンとか、正確な体の動かし方が彼女らしいのです。

このマンガの好きなところとして、男子の制服が学ランなのがあります。女子の制服は紺の落ち着いた生地に大きめのベルト、それに上着と一年を通して使えるデザインなのですが、男子は学ラン。いいですねー、学ラン。姿勢がいいです。登場人物がみな姿勢が奇麗なのですが。とりわけ学ランですと、着方で個性がわかりやすいですし、姿勢がよく見える。自分の現実世界を延長していったとして、男女ともに制服があり得ると思えるデザイン。ここ重要です。

夕方、川、飛び石、陸橋、雨、森、喫茶店、分かれ道。遠くない世界だと思える風景は重要です。アニメだと、生徒会室の質感がマンガ以上でおどろきますね。もうすぐ森に沈みそうに見えるくらいなんですが、説得力と言うか、絵の腕力が強い。

制服の反転として、登場人物たちの平服、私服姿もその衣服のデザインが目を引きます。当然なのですが、さほど情報量のない服装で、それだけに絵を読もうとするときに、邪魔にならない読みやすさが好みです。

 

一気読みして、頭の中に物語をまとめてインストールする心地よさを今回も楽しめました。つまりは、なにかと忙しい、興奮している頭の中をすべて入れ替える心地よさ。

没頭とは快楽です。その中でも自分がいなくなる物語の快楽が私の好みなのです。

 

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2月の「百木田家の古書暮らし」!

なんと、2月も毎号「百木田家の古書暮らし」が読めました。このままだと1巻でちゃう。

 

5話、6話は不思議な不思議なゆったり感と静かな静かな謎の浸潤が混ざり合った不思議な展開。「幻影博覧会」を思い出すなぁ。本筋とは別の物語が毎回毎回進んでゆくのだけれど、やっぱりこっそりと本筋が進んでゆくあの感覚。

「空電ノイズの姫君」(こっちのタイトルが好き)では、本筋よりもそれをくるんだ音楽青春ストーリーが面白すぎて、本筋忘れて楽しんでしまったんですが「百木田家」は、毎回のトビラアオリが「のんびり群像デイブック」とあるので「信じるぞ、信じるからな!」と念押ししてから読んでますが、2月はそのとおりでした。毎回、毎回が前半古書店バナシののんびり、後半が本筋がこっそり顔を出す展開。

3人姉妹のそれぞれが、一見のんびりデイブックなんだけど、そこで安心していると次には何が起こるかわからないぞ。いや、今回は信じていいのか。はてさて。

 

3月は単行本。すごい! はやい! 「ももんち」なみの速度!

 

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今週の一気読み 「はねバド!」

はねバド!」全16巻を一気読みした。

アニメは全話見終わり、マンガは終盤を連載で読んだ。今回がマンガを通して読むのは初めて。

 

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とにかく、勢いがすごいマンガだった。

一気読みでわかる異常なまでのドライブ感と疾走感。何に乗って、どこに向かってるのかさっぱりわからないたぐいの疾走感を全身で楽しめる。なによりゲーム中のスピード感は、さすがバトミントンな感じ。

謎が多い始まりから、それらを全部置き去りにしてゆき、スピードに乗ってゆく。思い返すと、ユニフォームが変わったあたりから助走完了、アクセルべた踏みじゃないかな。あわせてシャトルのスピードもばんばん上がってゆく。

ゲーム中のスマッシュを打つポーズがかっこいいんですよ。空中で伸び上がったり、足を広げたり。見開きだったり、かっこいいポーズにカッコイイ表情。動線も、書き文字も、シャトルの軌道もかっこいい。

なんといっても、主人公の羽咲綾乃の性格が最高に悪い。それを最初は隠しているのに、次第に顔に出てきたり、そのうちゲーム中に暴言にでてきたり。ナチュラルに煽りがひどい。対人戦はここまで性格を歪めてしまうのか……!

最後のゲーム終了から、後日談が十分に読めるのが好きです。後日談大好き。物語は終わったけれども、毎日は続くのだ、と思えるから。伝説が終わり、歴史が始まる。

マンガの始まりはコーチの挫折からの復活劇かと思わせておいて、そうじゃなくて、綾乃が人間になる物語でした。なお、性格はあのままの模様。そこがいい。人はそんな簡単に変わらないです。そこそこの社会性を持った人間になれました。周りがみんないい人、人格者。とくに理子ちゃん先輩。あの面倒くさいのふたりも面倒見て、なおかつプレイヤーとしても成長していく健気さ。天才じゃないなら、こうありたいと思わせる人でした。天才だからってなにやっても許されるわけじゃねーぞ。

 

なお、一気読みした副産物として、あきらかにファミリーテニスがうまくなりました。「ボディ!」とか「アウト!」とか口に出る始末。

封印解除 「古オタクの恋わずらい」かんそうぶんというかなにか

「古オタクの恋わずらい」の1巻がでて1か月か。何回読み返したか。「封印解除」の読み方がわかる人に届いてほしい。

 

あらすじは以下。

kisscomic.com

 

いやね、もう、ほんと読んでて胸が詰まる。ああいう時代があったから、今はオタクって別の名称みたいになったと思うんですよね。烙印じゃないというか。

 

そんないいもんじゃないぞ。これは知見じゃなくて業みたいなもんだ。

gendai.ismedia.jp

 

それはともかく、単行本を読み返してつくづく思ったのだけれど、別に新しいものを歓迎するのがオタクの義務じゃないってことについてだ。でもって、自分の通った道の他人の話は面白い。この辺りはひとそれぞれ。ほとんどエロゲー、ギャルゲーに触れてこなかったので、そっちの界隈の当時の話は新規あつかい。ましてや当然製作者側でもなかったし。そういうのは東京の話としてしか楽しめないのも残念だとも同時に思う。

 

同じ時代を生きても、こうも違うのだ。

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この漫画の主人公は女の子なので、エロゲー、ギャルゲーはぜんぜん出てこないし。最接近で主人公の友達がゲーメスト読んでるくらいか。

速攻連想する(意味が違う)。

kc.kodansha.co.jp

 

なんかもう、恋愛できないから燃焼できたエネルギーがあったんです。

でも、この主人公はちゃんと恋愛しようともがき始める。あああああああ、ふて腐らなければこの世界線もあったんだよなぁ、当然。で、その細い糸を諦めてない主人公の孤軍奮闘であったり、仲間との出会い、欲しい言葉がもらえたりとか、読んでて、ああああああ、と悶絶してしまう。

そして物語は1995年と2021年が交差して進んでゆく。2021年側物語をみると、主人公はちゃんと人生やってんなー、と思ってしまう。幸多かれと願ってしまう。

応援したくなるような、頑張ってる人を見ると涙腺がめっきり弱くなってしまいました。たぶん、全然そんな場面じゃないのに泣いてしまうんよね。

 

というわけで、ここまで読んだみんなは「フィットボクシング2」をやろう。