見えない全一

あのとき、私は全一相手にあがいていたのを思い出した。

 

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当時。仕事帰りにゲーセンに寄っていた。時間があろうとなかろうと寄っていた。

ティンクルスタースプライツビーマニ3rd、サイドバイサイド、アルペンレーサーセガラリー、鉄拳2なぞなぞひととおり通して過ごしていた。友達がいればスプライツを閉店間際までやりつづけたりもした。サイドバイサイド2で、溝おとしができるかどうかでもめたりした。鉄拳2で初めて対人でワンメキ決めたら筐体を蹴られたのもいい思い出だ。

で、本題。

そのなかにコナミのGTICLUBがあった。記憶で書くのだけれど、デモで表示されるランキングがすべて同じプレイヤー名だった。当時、ベストタイムは記録され続けたのかはわからない。

ただ、そのランキングとタイムに興味をもって、私はGTICLUBにコインを入れた。

市街地レースを小型車で、走り抜ける。坂道が多く、また、急カーブも多い市街地を駆け抜け、チェックポイントを通過してゴールを目指すゲームだ。

とりあえず、ミニクーパーでゲームを開始した。たぶん、そのランキングのプレイヤーがミニクーパーを選んでいたからだと思う。このゲームは、サイドブレーキがあり、急カーブを抜けるには、サイドブレーキでコントロールしなければならない。

走りながらサイドを引く。実車だとそうそうない。駐車場に入れるときくらいか(アクロバティックに)。とにかくサイドブレーキ操作が増えたため、両足、両手にそれぞれデバイスを割り当てて操作するレースゲームだった。

まずゴールができない。ゲームオーバーになる。ランキングが遠すぎる。それでも、プレイし続け、初級でゴールをなしとげた。しかし、これはまだ始まりに過ぎなかった。

で。

当時のゲーメストをみると、そのプレイヤーがGTICLUBの全一ではないか。図らずも私は全一に戦いを挑んでいた。挑むだけなら誰でもできる。

ここであきらめずに、とにかく、上級をミニクーパー(たぶん車種は変えてたはずだけど覚えてない)で、ゴールし、なんとか、ランキングに迫りたかった。全一に近づきたかった。全一を相手にしたかった。

その一念で、そうそうプレイし続けた。スリルドライブに置き換わるまで、やりつづけた。結局、ゴールはできたが、タイムはさっぱり縮まらなかった。

GTICLUBは、ショートカット、謎の挙動、サイドブレーキの急ターン、一方向でないコース選び(逆走ができた)などなど、気づけば、うまくできればタイムを縮められる要素が敷き詰められていた。

ただし、それらには何の説明もない。

うだるほどのトライアンドエラーの果てに、アイディアの一つ、一つをつぶしてゆく。全一氏の手法は判らない。ただ、稼働当初より全一氏のタイムは縮まり続けており、まだプレイを続けているとだけは判った。その人とは、生息時間が違うのだろう、まったくプレイをみなかった。

見られたとすれば、ずいぶんと攻略は変わっただろうと想像する。私の攻略はゲーメストやらの雑誌と、シーラカンスカンパニーのうっすい情報が頼りだった。ただ、本当に、心底、今だからこそ思うけれど、シーラカンスカンパニーのゲーム情報には、その情報量よりも、モチベーションの維持に必要だった。私の中で、シーラカンスカンパニーが特別なのは、それが理由だ。東京がらくた工房は繋がりやすければよかったかな……。

ただただ、GTICLUBには全一を相手にしている楽しさと喜びとがあった。ほんと、もー、ぜんぜんとどかねーの! やっぱすげぇな、とだけ、ベーマガゲーメストを見て、知ってはいたのだけれど、それを体感したのは、これが最初で最後だった。なお、ダライアス外伝は、横シュープレイ能力を持っていないのでまったくプレイしませんでした。Gダラはちょっとやったかな。レイフォースのほうがやりたおした気がする。

元記事に関連すると、プレイごとに、うまくできたところ、その逆をメモをとり、うまくできたところは再現性をあげ、ミスは改善する。レースゲームなので、全体の流れがあるため、ミスの原因はその瞬間の操作ではなく、それより前に、もしかするとうまくいったと思っていたプレイかもしれない。うまくいったコースでスピードが乗りすぎたために次のコーナーでミスる。

まずゴールするまでは、コース取りについての言語化、試行錯誤。

ゴールを果たしてからは、はてのないタイムアタックであった。言語化の繰り返しだ。

ブレーキをべた踏みすべきか、一瞬踏んで車の向きだけ変えるべきか、アクセルを踏みながらブレーキを踏んでみるか、サイドブレーキをどれくらいかけるか。どの瞬間ごとにエンジンの回転数はどれくらいを維持するべきか。そのためには、ブレーキかサイドブレーキか、それとも、一瞬エンジンブレーキでもいいのか、アクセルは開けっ放しでシフト操作で走り抜ければいいのか。スマホがないので、プレイの録画ができない。記憶するしかない。瞬間ごとに見るべきメーターは多い。

コース取りは正解があった。そのうえで、それを正確に、高速に、走り抜ける。ちょっとしたランダム性があるので、いい出目を拾い続けるしかない。

自分なりに、やりつづけ、やりとげて、前述のように、ある日突然スリルドライブに置き換わって、ゲームは終わった。スリルドライブにはGTICLUBのようなスリルはなかった。ラッドモビールのようなスリルがあった。ラッドモビールのゲームオーバーデモって結構好きなんですよ。終わった感じがして。

 

あと、GTICLUBの音楽よりも、セガラリーの歌のほうが覚えてます。横にあって、ずっと流れてたもんな、あの歌。ウォウウォウセガラリー~。