全力疾走。映画「サイダーのように言葉が沸き上がる」感想文

映画「サイダーのように言葉が沸き上がる」を見たよ。

夏の映画は夏に見るべきなんだよ。

 

cider-kotoba.jp

 

夏の! ボーイミーツガールは全力で走れば十分なんだよ!!

 

タイトルの「サイダー」のたったひとつの季語が映画を象徴する。

青空と、雲と、水田と、あぜ道と、用水路と、ショッピングモール。どれもこれも夏なんだけど、サイダーのたったひとことに負けてしまう。体験している人なら、あぜ道の草いきれ、水をはった水田から聞こえる蛙の鳴き声、用水路の水の色、雲、空、夕暮れから、むせかえる夏を思い出すんじゃないかな。はい、ここは自己紹介でした。田に水を張ると一気に鳴き出すよね、蛙。いままでどこにいたんだ、と思う。昼間は蝉がうるさく、夜は蛙が大騒ぎ。田舎が静かなんて大嘘です。

 

それはともかく。

 

物語は、「平凡」な暮らしの続く地方都市のショッピングモールから始まる。そして、物語は始まっている。もう始まっているのだ。地方、ショッピングモール、そのまわりは田、山、川、風と雲、焼けたアスファルト。夏だなー。今年こそなんかあってほしい。なんて思ってしまう。なんもないんだけど。花火くらいか。

 

そして、主人公のふたり。なにかをひとつ足さないと、外に出られないふたりが、ひょんなことからショッピングモールで出会う。ああ、このリアルさ。出会いはショッピングモール。今の地方にありそうな物語。ここがいちばん好きです。

 

そこからSNSで知り合って、フォローするのにためらって、いいねひとつクリックするのに逡巡する。もう、めちゃくちゃ今の青春。すべての行動が相手に伝わるのだと思うと、そこに、自分の思いと、もしかすると思い以上の何かが伝わってしまうのじゃないかと、どきどきする。

SNSがなかった頃ってどうやって生きていたんだろう。おじいちゃんの話はいつも長い。お父さん、お母さんの話は興味が惹かれない。140文字、できれば17文字にまとめてください。

でも、老人の思い出、父と母の生活、少年と少女の毎日。全部が全部物語なんだな、と見ながらつくづく感じました。

夏には夏を描いた映画を見たいのです。夏の映画は背景が主役なんです。この映画では、夏の風景を、さらに夏を連想させる色使いで見せてくれます。上映中ずっとずっと夏。そこも好き。

でも、なにより、全力で走るシーンが好き!

真夏でした。