エヴァの碑

シン・エヴァンゲリオン完結編とプロフェッショナル仕事の流儀を見た。見終えた。

 

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エヴァンゲリオンにおけるネタバレってなんやねん、とは思うものの、以下内容について触れたり触れなかったり、やっぱり自分の思い出をつづりたい。つまりは正確ではない。要出展。

放映当時。アニメに先立ち、マンガ連載、単行本1巻が発売された。「ナディアの庵野秀明最新作」。単行本巻末のエヴァンゲリオン初号機デザインは鬼であり、ウルトラマンだった。とくに足というか靴がウルトラマン(もしかすると東映スパイダーマン)。

時に95年。キングオブファイターズ95が出たころだったか(当時のオタクらしいと覚え方)。時代は90年代。スレイヤーズセーラームーン、ラムネ&40、石田敦子中嶋敦子の絵柄の時代だった。その伝言ゲームの中でエヴァンゲリオンのキャラクターデザインは新しかった。

庵野秀明のロボットモノと思って読んだら、ぜんぜんちがって面食らったのを思い出す。メインはロボットじゃない。ダンガードエースかよ! と思いながらも目が離せなかった。んでもって、アニメが始まる。それからはニフティサーブ(go ftva)とメイプルタンネットワークでいろいろ、いろいろ考察が流れてあふれかえってゆく。死海文書について学ばないと理解できないとか、聖書の原典に当たらないと引用は正確な解釈はできないとか。先に答え合わせができると信じながら。私はしらない単語ばっかり出てくるので、それに酔っていた。当時読んでいた「黒死館殺人事件」とおなじくらい意味不明だった。

私がもっとも影響を受けた解釈は、ゆうきまさみはてしない物語」での第七話の考察(?)だった。記憶だと、他にアニメに使う金があるならエヴァンゲリオンにもってこい的な解釈だった。

なるほど、見える部分は新しく、引用があるとわかると引用元を探したくなるが、大前提として、制作側の意図を読むのがあるのか、と気づいた。なにしろ、アニメにしろ、マンガにしろ、ゲームにしろ、テレビにしろ、なにかにつけてすべては東京の話である。そこに人がいる、大人が仕事で作っている、とはまったく思いもしなかった。

そうやって、エヴァンゲリオンは終盤に向かい、ますます庵野秀明と同一視されていった。ように思う。今となっては、最終2話は予定通りなのか、万策尽きたのかはわからない。いや、そこだけじゃなくて、なにもかもわからないまま、考察していたみんなの思いは消化されず、祭りは終わった。わかった顔して「世界の中心でアイを叫んだけもの」を評価するのも、自由だ。あらゆる考察に対する回答の期待は永遠に失われた。

私はあの最終話が大好きです。

でも、そのあとそういうのが増えた。とりわけ連想するのは「ゼノギアス」。あのエンディングでいいのか。と、みなの思いが一つになったのか、その後ゼノギアスはなんどもなんども作り直されていくんですが。あと「蒼穹紅蓮隊」。ゲーメストだったかのインタビューであれを「偶然」と答えていた記憶があるんですが、96年発売ではあんまり説得力もなく。「ガンパレードマーチ」は考察勢が公式BBSで答え合わせができたのは幸せな結末だった。これは、その後「エヴァンゲリオン2」につづく。シバムラティックバランスとは。そして、なにより放映終了のその年のキングオブファイターズ96にはゲーニッツが登場した。大丈夫なのか。

そうやって、いろいろなところにエヴァンゲリオンの影響があった。結果、たぶん、いわゆる90年代的なオタクコンテンツはエヴァンゲリオンによって消えていった。

次いで、シト新生彼氏彼女の事情ラブ&ポップもあるけれど)。記憶にあるのは、複数回見ている人たちが、Death編終了後にトイレに行った立ち回りだった。それでもまだ終わらずDEATH(TRUE)、2と作り直され続け、「Air/まごころを君に」に至る。おお、全部見てるな。WOWOW加入したよ、多分。LD買ったよ。テレビシリーズのLDは箱が間に合わなかったから、再版版になったけど。

これで終わったんだろうか。

んでもって、エヴァンゲリオンの新作はでないのに、ぱちんこ/パチスロの新作は毎年発売された。毎年新作映像が見られるのはパチ屋だけ! スロットエヴァンゲリオンは5号機第1号になったりした。エヴァンゲリオンがここまで生き続けたのはぱちんこのおかげじゃないかとおもうんですが。

新劇場版。序破Q。からの:||。みんなして、終わるんかほんまに、と思ったはずです。なにはともあれ、劇場版「まごころを君に」で、みんなしてアルジャーノンのお墓に花をあげたんじゃなかったのか。世界線の考え方が普及した結果、これはこの世界線となり、惣流アスカラングレーから式波アスカラングレーとなっても、真希波マリイラストリアスも収まるところに収まっていった(そういえば、テレビ版当時から空母そそそそなのでこういう名付けと受け入れられてたような気もする)。

毎回面白かったけれども、筋はおぼろげになっていく。いやねぇ、加齢。痛快動画が見られればそれでいいんだよ。なので、エヴァンゲリオンにおけるネタバレってなんやねんと思う次第。twitter上でゲンドウ編、鈴原サクラ怪文書とか出回るの最高じゃないですかね。そうか、ぼくらには鈴原サクラがいたんだ、と思い出しましたよ。

なによりプロフェッショナル仕事の流儀が最高でした。たぶん、まったく庵野秀明が出てこない、周りの人たちと風景のみで構成された、それでも庵野秀明スペシャルと言える映像が見たかったんじゃないかな。4年分の素材から、まったく庵野秀明の出てこないNHKクルーが主役のプロフェッショナルが放映されるのを楽しみにしています。

みながら、月刊OUTだったかな? で読んだ富野由悠季ガンダム評での、皆が見ているガンダムは完全に同じではなく、少しずつ違っていて、重なり合っているのだけれど、そのどれとも重なっていない部分にもガンダムがある、との一文を思い出しました(記憶)。立場としては指揮をとる、庵野の見たエヴァンゲリオンを皆が見えるようにするのが仕事なんですが、番組中では作品のため、お客のためとしていましたが、その客の中に庵野監督自身もいたんじゃないかなぁ。

私は、このプロフェッショナルがいちばんおもしろかったです。撮影にも、編集にもまったく庵野秀明が関係していないからでしょうか。完全に他人が作ったエヴァンゲリオンじゃないですかね、これ。

最後に。

ここまで完全にエヴァンゲリオンが終わっていながら、ぱちんこ新台が出たら大笑いしたいです。出るんでしょうけど。