やっと「魔界村」を楽しめた話。

Switchでカプコンアーケードスタジアムが発売された。発表から発売まですぐ。そういうところとても今風。

www.capcom-arcade-stadium.com

製品が発表されたときに驚いた。「ギガウイング」「プロギア」「1941」「19XX」「1944」があるやんけ! と。誰だCPS2は移植されないと豪語してたのは。他社開発は権利関係ザルだから移植されないと言い切ってたのは。

んでもって、ニンテンドーダイレクトの「この後すぐ!」のあと、ほんとにすぐ発売。すごいな、おい。

で、結局、時限無料の「魔界村」ばかり遊んでます。

とても楽しい。こんなに面白いゲームだったのか、と35年ぶりに教えられました。「マリオ」にやられていて、とりあえず、なにも考えずにジャンプしてたんですね、私。このSwitch版はゲーム速度を遅くできるのですが、そうして遅くしてあそんでみると「ジャンプをせずに進んでいくゲーム」だとやっとわかったんですよ。発見でした。

冷静になって考えてみれば、おっさんが鎧をつけているのですから、ジャンプなんざ絶対しちゃだめ、膝と腰が壊れます。足場の悪そうな魔界の、それも整備されていない村を、おっさんが鎧を着て進むのだから、ダッシュなんてできやしない。意を決してジャンプをしても飛距離は短く、高くもなく、ましてや軌道修正できるはずがないんです。足場から落ちたら当然のように垂直落下ですし。がんばれおっさん。

まわりをよく見て、ジャンプをせず、武器を使わず、走って、しゃがんで、進んでいくゲームだったんですよ「魔界村」は!

つくづく「スーパーマリオ」の影響が大きかったのだと感じます。Bダッシュからの大ジャンプ! なんてできるわけないんですよ。ゾンビ相手に武器を使わずにいられずはずもない。そこをぐっとこらえて、ジャンプも攻撃もせずに、なんとか切り抜けていく。梯子を上るのだって命がけだ。ジャンプしたら飛び降りもできない。膝と腰が壊れてしまう。梯子を上り切ったら、すぐに動けない。いったん登り切って姿勢を整えないと次の行動がとれないんだ(魔界村は梯子を上り切ると、謎に登り切った姿勢をとる。わざわざそのグラフィックが用意されているのだ!)。

移動中はめっちゃ腕を振って、短い脚を忙しく動かして走る。鎧は上下に揺れる(これもアニメーションが用意されている)。そしてなにより、わびしい姿なのは垂直ジャンプだ。蟹股のおっさんが両手を広げて、全力で垂直に飛ぶ。低い。おっさんの運動能力として妥当な、低いジャンプ力なのだ。当時のアクションゲームとしては、寂しいほどのジャンプ力。

とにかくジャンプしてはならない。梯子も使いたくない。

それを大前提に騎士道のため、お姫様を助けに向かう。臭そうな魔界の墓場を、森を、廃墟を、洞窟を、城をこえてゆく。出てくる敵はどいつもこいつも臭そうなやつばかりだ。歯を磨いてない、風呂に入ってないヤツらばかりだ。とにかく臭そうだ。

ゆっくりと世界を感じながら、ぼつぼつと魔界を進んでいく。ミスったら巻き戻す。安心設計。

速度低下と巻き戻し。これが快適に遊べる秘訣です。

当時、1944、19XX、1941が移植されないのか不思議でしたが、今回遊んでわかりましたね。

とにかく難しすぎますわ。

こんなん買うやつはいない。売れるはずがない。100円/3分のアーケードならかろうじて許される難易度です。その昔、シューティングゲームのトッププレイヤーが、上達の秘訣として、とにかくコンティニューをして、毎回最後まで通してプレイするのを繰り返すと説明したのを思い出します。1クレジットでクリアしようとするよな! そうじゃなくって、上達の秘訣はとにかく全編通してプレイすること、見ることが秘訣なのです。

しかし、100円玉は有限であり、つぎ込めば最後まで行ける保証もない。まずは最低限それくらいのスキルは身につけましょう。

そのむつかしすぎるレトロゲームを、遅くする、巻き戻す、のスキルを用意して現在でも遊べるゲームへと変えているのが素晴らしいです。とにかく簡単に繰り返せる、考える時間をつくる、試行回数を無限にできる。そうして発見を繰り返して、進めていける体験。

この部分で、レトロゲーム移植のエムツーとの現代の移植への手法の違いを感じました。エムツーシューティングゲーム移植シリーズのショットトリガーズでは、経験のあるプレイヤーがより深く潜れるツールが用意されています。スキルのある人が、繰り返し繰り返しプレイできる環境が用意されている。でも、それって、ある程度まで潜れる人が、より深く潜るための環境であって、これから潜る人には、それでもまだしんどいんですよね。

簡単に潜れるようにする。繰り返せるようにする。

ミスは仕方ない。そのミスのペナルティを無にできる。これは遊びやすいですし、延々魔界村を遊んでしまいますな。

あと、当時のカプコンのグラフィックは、影がついているのと、アニメーションパターンが豊富、独特の色使い(これは各メーカーに特徴があったと思う)が好きでした。「トップシークレット」「ストライダー飛竜」がとりわけ特徴的ではなかろうか。魔界村は、主人公アーサーの走る、ジャンプ、攻撃のアニメーションが細かく丁寧、豊富で面白いです。鎧が上下に揺れる、ヒゲ、青い目、そして影とやたら細かいんですよ。

ぜひ「魔界村」を遊んでください。「プロギア」は無理だ。人の目は横を見るようにできていないと思うんですが、どうですかね。