そして姫君は笑う。「空電の姫君」第1巻を読んだ話。
待望の「空電の姫君」第1巻を読み終えた。
「夜祈子は最悪の女だった」との一文からはじめる「空電ノイズ」と同様に、「空電の姫君」も夜祈子さんの思い出の一言から始まる。
物語は、まるで「イエスタデイをうたって」からマオちゃん、「羊のうた」から夜祈子さんがやってきたかのように見えるふたりがバンドと恋と友情と未来と青春とほか大切なもの全部をないまぜにして進んでいく。それもひどくゆっくりと。いやー、すごい。おもしろい。まだまだこんなに面白くて、全身に響いてくるまんがが読めるなんて、冬目景さんを追っている楽しみがここに集約されているように感じられる。
連載だとあんまり感じなかったのだけれど、まとめて読むと、マオパパと夜祈子さんが接近しているように見えてくる。そうか、そういうことなのかー、とか。
第1話のラストシーン、シーツを干しながら踊る夜祈子さんの姿が印象的に見える。そこに重なるマオちゃんの思い出のモノローグが、それと同じ気持ちを抱かせる。これから先に幸せはあるのだろうか、単純な幸せはなさそうだと、先の雨雲と遠くの雷の音を聞きながら、この道を進むしかないのだ。
中盤のライブで笑っているマオちゃんを見て驚いた。笑顔を見たのははじめではないかな。やっぱりギターが好きなんだなぁ。
そしてあとがき。
是非幻冬舎版「空電ノイズの姫君」をお買い求めください。
と力強い一言。大切。
おそらく細かいところ、細かいところに冬目景さんの好きなものを散りばめた、たのしいまんがなので、未読なんてもったいないですよ。是非。