格闘ゲームは飽きられ続けている

昨年末にツイッター格闘ゲーム、とりわけ連続技の是非についてもりあがっていた。当然ながら元ツイートに対して、同意と批判が集まり、いろいろと渦を巻き、立ち上がっていった。私はただ、それを見ていた。

元ツイートも、同意も、批判も、みんな同じ格ゲープレイヤーなのに、どうしてこうなるのかなとつくづく感じたのだ。

今をさること20数年前1997年、今はなき「ゲーム批評」の11月号特集が「格闘ゲーム、飽きねぇか」であった。

97年当時、いまから見ればブームの渦中ですら、すでに格ゲーは飽きられていたのだ。そしてなにより特集での格ゲーの問題点は「初心者お断り」だった。すでに連続技、むつかしいコマンド入力、ゲーセンでの対戦瞬殺などなどが議論されていた。

何のことはない。格ゲーはここ20年ちかくにわたってずっと飽きられ続けているのだ。同じ問題を解決せずに、解決できずにここまで飽きられて続けているのである。

それでも進歩はあって、いまならネットワーク経由で自分と同じくらいの腕のプレイヤーと遊べなくはない。が、しかし、そのツイッター議論中で「同じくらいの友達がいなくなったから格ゲーやめた」とつぶやく人もけっこう目にした。やはり隣の友達と声を出し合いながら、勝ったり負けたりしたいのだ。当時のまんが「げんしけん」のキャラクター紹介に格ゲー持ちキャラ欄があった。誰もが格ゲーを遊んでいたし、それなりに使える、勝ったり負けたりできるキャラクターを持っていたのだ。

 

togetter.com

 

格ゲーの強い/弱いの分水嶺は防御の巧拙だ。CPU相手だとこの防御の練習がなかなかしづらい。心理的にも。CPU相手に黙々と防御の練習ができるメンタルはなかなかもてないだろう。

そして、格ゲーは攻めるのは簡単で、攻め続けるのは難しく、防御は難しいが、防御し続けるのは簡単である。この非対称性が、ますます防御の練習を難しくする。

相手がこうきたら、こう防御、そのあとこう、防御されたらこう防御する、とキャラクターにあわせてプレイ文法を組み立てるのだが、これを当然のように求めるとなると、初心者断り感は出てしまう。先に述べたように、攻撃のほうが簡単だからだ。あと、ボタンを押すのと、レバーを後ろに入れるのとでは、操作感、直感的な操作の手触りが異なる。操作をガードボタン、1レバー3ボタンとした「バーチャファイター」は偉大だ。防御が格ゲーの基本、キャラクターが動作させるのには「ボタンを押す」が妥当だと判っていたのだろう。これは贔屓の引き倒しだけれども「月華」でも強力なガードである「弾き」はボタンアクションだ。

戻って、連続技、攻撃し続ける行為の問題点は、その途中で防御ができない点である。その問題点への回答のひとつとして「鉄拳」の10連コンボは途中でガードのタイミングがある。知っていないとできないけどね。要は練習である。結局話は元に戻る。

結局のところ、格ゲーのスキルは課金じゃ解決できず、万人が同じだけしか持ち得ない資産である時間をぶっこみ続けなければ上達しないし、最初の勝利までが遠く、勝ったり負けたりはそれより遠い。そこまで続けられるメンタルを持ちえるのはなかなか難しい。

これもまた時代が解決したのだけれど、今ならアーカイブスで古い格闘ゲームが安価で買える。情報量の少ない、古い格闘ゲームをいったん遊びこんでほしい。ひとつやりきれば、同じ文法がだいたいの格闘ゲームで再利用可能だ。ウメハラ氏の書籍「勝ち続ける意志力」で「新しいゲームがでると全員がまたゼロからスタートとなるのが面白い」とあったけれど、それは基本文法が身についたうえで、そのゲームならではの勝利の文法を探す、身につけるのが全員同じ位置からのスタート、の意味であって、格ゲーの基本そのものがゼロからスタートの意味ではない。

格ゲーは楽しい。だから20年以上飽きられ続けている。

だから、なんでもいいので、ひとつのゲームで、1人のキャラクターでいいので、完全に自由に動かせるのを目指して欲しい。私は20年越しで「月華2」の高嶺響の昇華が安定してきた。

格ゲーの連想で、しんざきさんのツイートがおもしろく、印象的なのでリンクする。

 自分と同じくらいのプレイヤーに出会えたらかように幸運である。あと、どうでもいいことだけれど、カニスポって、カニスポの写真からはその名前の由来がわかんないよね。

また、最近は動画配信も充実しているので、見るだけでも楽しい。十分だ。そのむかし「ファミ通」で鈴木みそさんの「あんたっちゃぶる」で、スポット21だったかの「バーチャファイター」レポートまんがで、大技を決めてもりあがるサブモニターの前で「格闘技の楽しみ方をしてしまった」と口にするシーンがあったが、今から思えば、eスポーツの始まりのようなものである。

格ゲーの本を読むのもの同じくらい楽しい。ウメハラ氏の本はどれもこれも面白い。まんがなら「ハイスコアガール」「レバガチャアーカイブ」「七海の623」「いつかみのれば」、小説なら「インサート・コイン(ズ) 」「俺より強いあの娘を殴りに行く」「ゲーマーズ!」、毛色の違うところでは「バーチャファイターリラックス」も面白い。

で、気が向いたらまずは古い格ゲーを遊んで欲しい。情報量が少ないほうが遊びやすいですから。

私は「あすか120%」の新作を応援しています。そんなものはない。