「ゆるキャン△」のやさしい世界

ゆるキャン△」連載分が伊豆キャンプに向けて進んでいる。おそらくアニメ二期の山場はここだろう。

10月はなでしこ家族回、11月は志摩リン家族回だった。この家族模様を描くところが「ゆるキャン△」のやさしい世界の源泉だ。

物語中にはキャンプの関連する要素以外は扱われていない。恋、進学、友人関係、反抗期などなどの悩みは一切語られない。学校を軸とした、先生、友人との関係はキャンプを通じて親密になる。妹を探して姉が深夜に車を出してくれる。妹のキャンプの付き添いで車中泊をしてくれる。風邪をひけば友人が自宅まで見舞いに来てくれる。家族が顔を出しても恥ずかしがるそぶりも見せない。一人娘が原付免許をとっていきなり100キロを超える小旅行を計画しても、送り出してくれる。行き先にあわせてお使いを頼む態でお小遣いを持たせてくる。祖母、妹とこたつでみかんを食べながら、肉の食べ方を相談できる。年越し詣でを先生、友人と出かけられる。ちょっとキャンプでしくじっても、友人、先生が助けに来てくれる。引越し先の友人と、地元の友人が違和感なくなじんでいく。昔の自分の写真を見せられても、気にしない。親戚宅に友人を気軽に呼んで、泊まってもらえる。ちょっと、地元のとっておきを教えてみたりする。バイト上がりの友人が夜でもそれに付き合ってくれる。バイト先に友人の母親がきたら、ちゃんと話ができる。

キャンプでの献立に悩んでいると父親がアドバイスをくれる。父親が原付をメンテに出してくれて、追加パーツをつけてくれる。祖父はパーツが足りないとバイクを駆って買いに行ってくれる。友人たちはこっそり誕生日を祝う準備を進めてくれる。

居間で家族でテレビを見るシーンはない。タブレットでの調べ物は居間で家族と一緒にすごしながら。しくじった食器はサボテン入れに再利用してくれる。

家族、友人、先生や、いろんな大人たちが自分の話を聞いてくれること。

幸せの源はこれに尽きる。

ゆるキャン△」世界の特異点は、とりわけ家族が扱われているところだ。両親が子供に任せて海外赴任なんて事態は存在しない。

彼女の物語は、家族そろって山梨への引越しから物語が始まる。

祖父からもらったキャンプ用具で彼女の物語は始まっていた。

このやさしい世界、それを反抗期から照れくさいとも感じない少女たちをとりわけまぶしく感じるのだ。しかし朝日はまぶしい。そのシーンもたったヒトコマ、椅子が湿っているのをはたく彼女のしぐさがあるだけで、印象的になる。好き。たしたし。

ゆるさ、とは、この心地よさなのだとつくづく感じる、ここ2回の連載だった。