こがらし輪音「この空の上で、いつまでも君を待っている」が好きだ。

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こがらし輪音「この空の上で、いつまでも君を待っている」を読み終わった。ここ最近で一番好みで、一番泣けた一冊となった。

昨年秋の電撃祭での発表された、第24回の大賞受賞作だった。タイトルとそこにあったあらすじを読んだだけで、大好物の物語だと直感できた。読めるのが待ち遠しかった。

あらすじとしては、夏休み前に偶然にロケットを作っている少年とであった少女が、その夢と情熱に打ち抜かれる、ガールミーツボーイものだ。少女の観点から書かれるので、これはガールミーツボーイなのではないかと。そんなジャンルあるのか知らんが。

先に述べたように、まず第一にとにかくタイトルがよかったのだ。彼女から見れば、少年は「ガラクタの王」なんてかっこわるいものでしかない。それでも王、彼女にとってはそう見えたのだし、それを賛辞と受け取る少年との関係性もあこがれるほどに愛らしいではないか。

んがしかし、改題。そのタイトルも作中に出てくる、重要な言葉ではあるのだけれども、あまりにもかっこつけすぎじゃないか。そんなかっこよさなんて少年は求めていなかったんじゃないか。そういう意味ででてくる言葉じゃないし、そんなあきらめじみたかっこよさなんて、まったくこの物語には似合ってないじゃないか。

メディアワークス文庫から出すから仕方なかったのか。

と、改題は残念だったけれども期待通りだった。ひとなつの、人生を変えちゃう出会いと別れの物語。不穏な最終章から、一転する長いエピローグともう涙が止まらなかった。まるで、期待したけどなにもなかった夏休みが終わった残暑の9月の学校からの帰り道で背を丸めてとぼとぼ歩いていると、突然背中をちからいっぱい叩かれて、元気ねーな! と期待通りの彼女の声がしたうれしさのような、長いエピローグが、本当に、本当にうれしくて、きもちよくて、ライトノベルだからこそできる終わるかただった。昨年の「86」でも思ったけれど、こういう終わり方ができるからライトノベルの価値があるんだ。

2回読むと、懐かしいアルバムをめくるような気持ちで、もうしょっぱなから泣けた。ああ、そんなことがあったなぁ、と、自分の思い出のように身近に感じられて。

こういう「エモい」物語は今となっては2本立ての電撃文庫としてはメディアワークス文庫から出すべきなんだろうけど、やっぱり、元のタイトルのまま、少年向けとして電撃文庫から出してほしかったなぁ、なんて思う。売れるのはメディアワークス文庫なんだろうけどさー。

というわけで、これを読み終わった私は、書棚の「ほうかごのロケッティア」(大樹連司 ガガガ文庫)の隣に並べましたとさ。

その隣には「ひとりぼっちのソユーズ」(七瀬夏扉 富士見L文庫)が並んでます。

つまりはそういうことなのです。